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女性ホルモンと歯周病の関連性
こんにちは!
衛生士の岩野です(・U・)
今日は女性ホルモンと歯周病のお話をします。
女性ホルモンは生涯を通して女性の身体に深くかかわっています。女性ホルモンの分泌量は、一般的に20~30歳代前半にピークを迎え、その後は低下して45~54歳に閉経を迎えると欠乏します。これらの女性ホルモンの変動は、口腔内にも影響します。
女性は1日2回以上歯を磨く人の割合が多く、男性より歯磨きの回数”および補助的清掃用具の使用率が多いことが報告されています。さらに、女性のほうが男性より約1.2倍歯科を受診していると報告されています。しかし、厚生労働省「歯科疾患実態調査」の「20本以上の歯を有する者の割合」は2005(平成17)年では55歳以上で2016(平成28)年では75歳以上で、女性のほうが男性よりも少ないという結果になっています。しかしながら、この11年間で女性における残存歯数は改善されており、これは歯科受診率増加の表れではないかと推測されます。
歯周病は、プラーク中の細菌による感染症です。なかでもグラム陰性嫌気性菌であるポルフィロモナス・ジンジバリス(P.gingivalis)などの歯周病原細菌の感染によって起こります。
そして、その発症と進行はさまざまなリスク因子によって左右されます。
細菌因子のほかのリスク因子としては、環境因子および宿主因子に大別されます。
環境因子とは、
喫煙
ストレス
栄養障害
肥満
薬物
社会経済的環境です。
さらに、歯磨き習慣、定期健診の回数なども考えられます。
一方,宿主因子とは、
歯石
不良補綴装置
歯の形態異常
口呼吸
ブラキシズム
年齢
人種
性別
全身疾患
などです。そして、女性では、宿主因子として、女性ホルモンがあげられます。思春期および妊娠期における女性ホルモンの産生亢進や更年期における女性ホルモンの欠乏により、歯周病進行のリスクが高まることが知られています。
①月経周期における歯周病のリスク
日本人女性の月経周期は、一般的に28~31日周期といわれており、「月経期」「卵胞期」排卵期」および「黄体期」の4期に分かれます。
女性ホルモンにおいては、卵胞ホルモン(エストロゲン)が排卵日付近に増加し、エストロゲンと黄体ホルモン(プロゲステロン)の両方が月経開始1週間前から月経直前(黄体期中期~後期)に増加します。口腔内では,歯肉溝滲出液中の女性ホルモンの増加により、これを本来の栄養源(ビタミンK)の代用物とする歯周病原細菌プレボテラ・インターメディアが増殖するため、歯肉の炎症が起こりやすくなります。月経周期においては、排卵日付近および月経期始1週間前から月経直前にこの細菌の増殖がみられます。そのため、歯周病に罹患している女性においては、普段と見た目のプラーク量は変わらなくても、女性ホルモンの増加により、歯周ポケット内の歯周病原体菌の数や割合が増加し歯肉の炎症が亢進します。しかも、女性ホルモンの増加により免疫応答が一部抑制され、感染しやすい状態になります。
②月経周期における口腔衛生管理
20~30歳代でも歯周病が進行している、またはプラークコントロールが良好でも歯肉の状態が改善しない女性の患者さんの場合、月経周期に関連して歯肉緑下の歯周病原細菌が増殖している可能性があります。また、さまざまな理由から経口避妊薬(ピル)などのホルモン薬を3年以上使用している場合は、高濃度のエストロゲンおよびプロステロンに侵されている期間が長くなるため、中等度~重度の歯周病となる場合が多く、歯周ポケット中の歯周病原細菌の割合が高かったという報告もあります。
このような月経周期において、女性ホルモンの増加に伴って起こる「月経周期関連歯肉炎」では、月経周期を考慮に入れ、患者さんのセルフケアによる良好な歯肉縁上プラークコントロールと、歯科衛生士が行う適切な歯肉縁下プラークコントロール(プロフェッショナルケア/プロケア)により、口腔内環境を維持していきます。
セルフケアとしては、排卵日付近および月経開始1週間前から月経直前までの間は、女性ホルモンが増加し,P.intermediaが増殖しやすくなるため、その間はプラークコントロールを徹底する必要があります。セルフケアでは、歯ブラシおよび補助的清掃用具である歯間ブラシやデンタルフロスなどを使用した「機械的プラークコントロール」が一番重要です。また、抗菌・殺菌作用のある歯磨剤や洗口剤などの「化学的プラークコントロール」を併用することにより、さらにプラーク除去効果が高まります。さらに、補助的な手段として、「生物的プラークコントロール」としてのプロバイオティクスの使用も有効とされ、その代表として、乳酸菌ラクトバシラス サリバリウスTI2711(LS1) が歯肉緑下の歯周病原細菌を抑制するという報告もあります。ただし、プラーク除去には歯ブラシ等による機械的プラークコントロールが基本であることを忘れてはいけません.
プロケアについては、女性ホルモンの分泌が少ない時期に行うとよいでしょう。細菌が増殖する前にスケーリング・ルートプレーニング(SRP)を行い、細菌数を減少させておくことで、女性ホルモン分泌亢進に伴う細菌の増殖を抑制することができます。
長年かけてできてしまった歯周病は治療にも時間がかかります。
今の自分、将来の自分のためにもしっかり治療しましょう!
https://www.tsuda-dental.com/gum-disease/
新屋敷津田歯科医院 歯周病認定衛生士 岩野
デンタルハイジーン2023.VOL43.より引用